一番最初の記憶はなんですか?

 保育園で、みんな庭に出ている。よく晴れている。

 前にいる保母さんが大きな声で「今から言う色の服を着ているひとは、部屋の中に戻ってください」と言った。

 「黄色のひとー!」

 「赤のひとー!」

 順番に、色の名前が呼ばれていく。呼ばれた色の服を着ている人たちは次々に玄関に向かう。

 ついに、僕ひとりだけが庭に残ってしまった。

 保母さんはちょっと苦笑いを浮かべながら、

 「青のひとー」
 「黒のひとー」

 と続ける。

 僕は紺色の服を着ていた。お母さんがそう言っていた。だから、僕は紺色が呼ばれるまで部屋に戻ることはできない。

 保母さんが、困った顔をして
 「じゅんくん、その服、何色?」と聞いた。

 「紺色」と答えた。

 保母さんは大きな声で「紺色のひとー!」と言った。

 僕は走って玄関に向かった。

“一番最初の記憶はなんですか?”への4 件のコメント

  1. ash

    今さらなコメントなんだけど、このエピソード、すごく好きー。
    佐々木少年のピュアなところと孤独感が。
    映像として見えますもん。

  2. 佐々木

    ありがとうございます〜
    なぜか記憶に残っている出来事なんですよね。けっこうくっきりと。
    よく言えばピュアですが、意固地なだけですね!3つ子の魂100まで、か……


  3. 初めましてー。
    『ハイパーロボット』でぐーぐる検索してて、このブログにやってきました。
    そしたらボードゲームの記事以外にもいろいろ素敵な記事がたくさんありまして。
    うっわ読み応えあるブログ見つけたわぁ!と、一番最初のエントリから黙々と読み進めてきていたんですが、やられました。。コメントせずにはいられなくなりました。
    このエントリ、美しいです。
    上の方も映像として見える、と書かれていますが、自分にもわずかに何か見えた気がします。
    そもそも、タイトルからしてすでに興味を引かれて読んでみたら、ショートショートとして何かの媒体に掲載されてもおかしくないような、みずみずしさをまとったエピソードが。。
    お母さんが言った『紺色』を刻み込んで、待ち続ける少年の純な気持ちに胸が熱くなります。
    ちょっと口を堅く結んだような、そんな少年の顔も思い浮かぶのです。
    それと、あいまいにほほえむお姉さんの姿。
    短い文章ながら、いや、むしろ短くまとまっていることで、話にいっそう魅力が増している気がします。
    「僕は走って玄関に向かった。」
    最後のこの文章を読んだか否か、鳥肌が立ちました。
    駆け去る少年の後ろ姿と一緒に物語の景色もぶれて失せゆく独特の味わいを感じました。
    自分の一番最初の記憶、ときどき思い出してみようとするのですが、それが果たして、大きくなってから見た昔の写真なんかで後付けされた記憶なのか、純粋に昔からの記憶なのか、それがあいまいで、いまいち「これ!」というものがありません。
    そのことがときどき残念に思えます。それっぽい記憶がないわけではないんですけれども。。
    それはそれ。
    絵本か挿絵付きの小話にでもできそうな逸品、ごちそうさまでした!

  4. 佐々木

    ※さん、はじめまして、コメントありがとうございます。しかもこんな長文を!本当に嬉しいです。いや、ほんとに泣きそうになりました。もう一度、ありがとうございます。
    ブログを拝見させていただきましたが、趣味趣向がかなり僕と近そうな感じですね。これからもまた是非おこしください!

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